特集二回目は皆さん大好きアイリッシュパイプです。
個人的にはもうアイリッシュパイプは表立っては弾いていないのですがユニットの録音や個人的なライブでは細々と触っていますよ。
アイリッシュパイプ(ス)
Uilleann Pipes、Irish Pipes なんて呼ばれていますね。
ホント、日本でも世界でもメチャメチャ色んな処で使われていますね。
耳を澄ませばアイリッシュパイプって感じで。
スコットランドの映画の中でもアイリッシュパイプだし(笑)
どんだけモテモテなんだよォ~ 君は?って感じですが。
そんなモテモテ、アイリッシュパイプですが結構制約もあります。
制約と言っても他のパイプに比べればかなり自由度の高い楽器ですが。
音域
チャンター
基本の音域は、D~D~d の2オクターブです。
バグパイプの中でキーを使わずにオーバーブローで2オクターブ出せるってのはなかなかですね。
※オーバーブローと言うのは笛を強く吹くと同じ指使いでオクターブ上の音がなるあの状態ですね。
他にもスペインのガイタもオクターブ上が出ますが詳しくないので触れない事にしておきます。
ちなみに上のスケールの内、赤色部分の音はキーを使用して出します。
実際のキーはこんな感じです。
木製の黒い黒檀の菅の左右(上の写真だと上下)に金属製の部品が見えますがこれがキーです。
ただし1オクターブ目のナチュラルCはクロスフィンガーリングで出します。
クロスフィンガーリングってどんなの?ってよく質問されますが指孔を順番に上げていった状態ではなくて変則的な指使いになっている部分を言います。
例えばアイリッシュパイプのナチュラルCを出すにはこんな感じの指使い。
● 左手親指
-
〇 左手人差し指
● 左手中指
● 左手薬指
-
● 右手人差し指
〇 右手中指
〇 右手薬指
● 右手小指
又は
● 左手親指
-
〇 左手人差し指
● 左手中指
● 左手薬指
-
〇 右手人差し指
〇 右手中指
● 右手薬指
● 右手小指
※〇 あける、●閉じる
ほら、順番に指孔を空けている筈なのに何故か左手中指、薬指 & 右手人差し指なんて変則的な押さえ方をしていますよね?
こういう感じの指使いです。
あと、スケール内のチュラルCはアイリッシュパイプにとってちょっと癖のある音でチャンターによっては標準ピッチではない場合もあります。
ですので録音の仕事等でナチュラルCが標準ピッチじゃないのをどうにかしろ!!なんて感じで怒らずに何とかうまく逃げる方法若しくはアレンジをしてほしいものです。
またEbに関しては単に指孔を押さえる押さえないで制御できる音なので楽に出ます。
あと、アイリッシュパイプは上記に上げたD菅(Dの音から始まる菅)が基本ですがその他にC、B、一部、Ebもありますが国内で持っている方は数人です。
ドローン
アイリッシュパイプのドローンは3本あるのですが何れもDの音になっています。
これらDの音が1オクターブづつチューニングされています。
演奏時にはこれらのドローンの音は出したり止めたり自由に出来ますよ。
レギュレイター
アイリッシュパイプ特有の発音菅としてメロディーを出すチャンター、一定の音を出すドローンの他に下記の写真の様なレギュレイターと呼ばれる菅が3本付いています(フルセットの場合)
この3本は限定機能のチャンターが3本付いていると思っていただければ良いです。
上の写真の並びで出る音を書くと、
C, B, A, G
A, G, F#, D
C, B, A, G, F#
つまり上のキーを縦に同時に色々な組み合わせで押さえるとコードが鳴りますよ。
特徴的なフレーズ
ロール、トリップレット、クラン、スライド、ウエーバー、ポンピング等、伝統音楽で使用する装飾音の数々をこれでもか!!という程に使用出来ます。
これらは詳しく説明するとかなりの量になりますので後述の動画を観ていただいてこういう音使いをするのが普通の演奏方法なんだぁ~ってのを感じていただければ。
逆によくアレンジャーさんが勘違いされそうな音に関して書いてみますと。
よくあるのがバロック等のリコーダーで出す装飾音を指定される事が多いですが本来のアイリッシュパイプの演奏では殆どというか全く使用しません。
例えば、こういう感じ。
なのでアイリシュパイプやってる人からすると結構、違和感があったりします。
でもこれが欲しいのであれば仕方ありませんが(^^♪
苦手なフレーズ
オーバーブローで2オクターブ目に飛べるんですがC→g、C→a なんてのはしんどいです。
それはオーバーブローする場合、多くは一旦チャンターの下を膝に付けるという動作を行うんですがナチュラルCから上に飛ぶにはクロスフィンガーリングを行っているナチュラルCから全ての指孔を押さえて膝にチャンターを付け、そこから2オクターブ目のGに飛ぶなんて動作になります。
曲で言えば、Gravel Walks の4パート目みたいなフレーズ
C,G,C,A,C,G,C~なんてのが並んでますよね。
リードのコンデションの悪い日にこの手の録音に当たったらマジ神様を恨んじゃいますね。
ちなみに馴れてる方なら大丈夫ですよ(^^♪
私はなんちゃってでやっちゃいますけど。
なんちゃってと言うところがミソ(;^ω^)
あと、コードの分散をスタッカートで指定されるとしんどいかも。
こんな感じ。極端な例ですが。
上りならまだしも下りは多くの人は厳しいと思います。
更にGコードの上記の様な分散和音をスタッカートで綺麗に弾くのはかなりの熟練者でないと無理かと思います。
NSPじゃないんだからクロスフィンガーリング含むスタッカートでの分散コード(G等)は止めて欲しいかも(;^ω^)
GとCがレガートになってると全然普通に弾けちゃうんですけどね。
幸せになるには
一番、楽に出せるのはDのメジャースケールです。
それも連続して流れる様なフレーズ。
その間に同じ音が続いてロールなんてのを入れる場合でも。
ちなみに流れの中で出てくるCナチュラルは全然平気です。
ナチュラルCとC#を行き来する曲が結構、アイリッシュチューンにはありますし。
そんなフレーズなら140位の速度でも大抵のパイパーは綺麗に弾いちゃいますよ。
音域は下のDから1オクターブ上のDを超えBまでなら楽に出せます。
それも音が飛ばずに連続した感じが嬉しいです。
後はGのメジャースケールも。
ただしGのメジャースケールの場合はGから1オクターブ上のG、プラスBまでになります。
Gから下のF#、E、Dはもちろん使えますけどね。
そしてD、Gのメジャーが出せるので平行調のEm、Bmも楽勝です。
時々、アイリッシュパイプの演奏依頼でハ長調やフラット系が来る時ありますが出来ません。
(※CのチャンターならOKですけど)
また、音域が2オクターブだったり2オクターブ突き抜けてるのも出来ません。
以下の音の並びを呪文の様に唱えながら曲をお作り頂ければ。
D,E,F#,G,A,B,C or C#, D, E, F#, G, A, B (低 → 高)
Bより上のC,(C#), Dは録音を行う部屋の調子(温度、湿度)によっては出なくなることもあります。出来ればアレンジの段階で上記の音だけを使用すれば幸せになれるかと思います。
参考動画
かなりの速度ですがアイリッシュパイプらしい音の並びで演奏している方も気持ちい良いと思います。この手の依頼があるとパイパーは喜ぶかと(^^♪
これはチャンターのみを使用して気持ちよく演奏されている感じですね。
次はレギュレイターを使いまくってる動画。
個人的にはちょっと使い過ぎている感があまり好きではないですが参考としてです。
やはりこれ位がバランス良くて好きですけどね。
Bmの曲でバリトンレギュレイター(一番大きい奴)のG音が鳴るのが凄く好きですねぇ。
後はやっぱりスピードに乗ってガンガン行っちゃてるのが大好き。
すみません。
なんか参考動画って事ですが個人的に好きなものを上げてしまってます。
音源
参考になるパイプの名盤は沢山あるので(;^ω^)
あくまでも個人的に普通に聴いてアイリッシュパイプの音ってのが伝わりやすい様なアルバムを上げています。
音がはっきりしている等を基準に。
Poirt An Phiobaire
殆どパイプとギターだけの構成で且つパイプの音がよくわかると思われます。
ですのでこの手のスケールを使用すれば問題ないのかなぁ~?なんてのがわかっていただけるかと思います。
後はとにかく落ち着いた素敵な演奏だとこのアルバムが良いかと思います。
May Morning Dew
もし録音でアイリッシュパイプを使いたいなら
スタジオ内の湿度に注意してあげてくださいね。
少しの湿度の変化でそれまで何気に行っていた演奏が全く出来なくなるくらいの状態になる事も多々あります。
暑そうだからっていきなり空調をオンにすると簡単にアイリッシュパイプのリードは死んでくれます。
せっかく今まで録ってあともう少し。って処で時間切れになってしまいます。
クーラーつける優しさはメチャメチャ感謝ですがその前に目の前のMさんに確認してからにすると良いかと思います。
もし、
「もう少し我慢します。」
なんて答えが返ってきたら汗だらだらのMの事は放置し湿度でコンデンサーマイクの特性がイカれポンチになりそうでも我慢してミネラルウォーターを500ml位だして付き合ってあげて頂くと良い音が録れるかと思います。
気にしなくても良いです。
彼らはMですから。
日頃からパイプのメンテナンスで痛めつけられているので湿度が増えた位でダウンしません。
明らかに熱中症になりそうならパイプを残して部屋から連れ出してあげると良いかも。
国内のもの好きさん
今はアイリッシュパイプを演奏される方はメチャメチャ多いですねぇ~
個人的な知り合いだけで20人程は居ます。
持ってるとか噂を聞いた限りでは4~50人位居るんじゃないでしょうか?
ホント、信じられないくらいの状況ですね。
その中でも幾人かの方は忙しくスタジオミュージシャンしていますし。
北海道に2人(最近始められた方も結構居られるみたいです)
関東には初心者の方含め20人位。
中部、北越、信州には5人程。
関西だと8人程。
岡山や九州にも数人の方が。
かなりの数の奏者が居られますねぇ~
嬉しい限りです。
多人数で切磋琢磨していけば全体の技術の底上げにもなりますしね(^◇^)
頑張ってね!!
でも頑張りすぎはダメだよ。
しんどさも楽しんで行きましょう!!
次回はハイランドパイプです。
でわでわ(^_-)