
技術者は、どこまで「完璧」を求めるべきなのか
先日、バイオリンの修理で、少し考えさせられることがありました。
魂柱が倒れてしまったので、それを立ててもらおうと楽器屋さんへ持ち込んだだけの、よくある話です。
見積もりの際に指摘されたのは、
- 顎当ての交換
- テイルピースの交換
- ブリッジの交換と調整
- 魂柱の交換と調整
- 弦の交換
これで10万円ほど、とのことでした。
正直なところ、
顎当てやテイルピースなどの表面的な部分は自分で交換できます。
なので、その旨を伝えて、今回は魂柱だけお願いできないかと聞いてみました。
すると、
「それなら、もっと安くやってくれるところがありますよ。
修理をする以上、私は完璧にしたいので。」
という返答でした。
言い方も含めて、特に不快だったわけではありません。
ああ、この方はそういう仕事の仕方をされるんだな、という印象です。
これを自分の仕事に置き換えてみると、
どうにも話が噛み合わない感じがしました。
私はフリーランスでプログラマをしています。
最近多いのは、稼働中システムの一部改修やバージョンアップです。
お客さんの要望は、
「ここだけ直したい」
というものがほとんどですが、
中を見てみると、他にも気になるところがいくつも出てくる。
体感としては、
1機能の修正依頼に対して、
実際は5つも6つも手を入れた方がいい、
そんなことも珍しくありません。
ただ、だからといって、
「全部直さないと意味がないので、今回はお断りします」
とは、なかなか言えません。
状況は説明します。
こうした方がいい、という話もします。
でも、最終的にどうするかを決めるのは、お客さんです。
予算や期間が最初から決まっていることも多く、
後から話をひっくり返すのは現実的じゃない、
というのも正直なところです。
だからこそ、あの楽器屋さんの
「完璧な仕事ができないなら引き受けない」
という姿勢が、
少し羨ましく感じました。
自分はこれまで、
予算、期間、人員、技術。
その全部の間でバランスを取りながら、
「これで良しとする」地点を探し続けてきた気がします。
それを妥協と呼ぶのか、現実解と呼ぶのかは、
今でもよく分かりません。
ちなみに、件のバイオリンは別の楽器店へ持っていきました。
事情を話すと、
「魂柱以外に不具合が見つかっても、今回は対応しないということでいいですか?」
と確認され、それで話は終わり。
ついでに簡単なクリーニングもお願いして、
費用は1万円ほどでした。
結果としては、
自分も店も、どちらも納得できた形だったと思います。
還暦を過ぎても、ありがたいことに現役で仕事をしています。
最近は、技術的な作業の多くをAIに任せるようになりました。
以前なら人に頼んでいたことも、今は自分で何とかできる。
その一方で、
残るのは人とのやり取りばかりです。
言葉の選び方、
文章の書き方、
返事のちょっとしたニュアンス。
技術職は、長くやっても難しいですね。
でわでわ🌝